(気まぐれっぽい)Queen
ボウリング場は、すごい混んでいると思っていたのだけれど、そこまで混んでいなかった。
「まずはボウリングから?」
いつも負けてばかりだったボウリング。勿論、最初はボウリングだ。最後だと、体力持たないし。
「当たり前でしょう?ボウリングに決まってるじゃない」
「ほんと、負けず嫌いだねぇ」
「余計なお世話よ」
余裕のあるその笑みを引っ張なしてやりたい。化けの皮剥がしてやる。
そう、心に決め、いざボウリング。
先者 悠貴。まず一投目。
ボールは緩やかなカーブを描き、ピンに当たった。
ガコンッ
6ピン倒れた。
「うーん、まあまあってとこかな」
そう言いながら、悠貴は2投目を投げる。あと4ピン。
ガコンッ
「あー…、あと1本だったのに」
悠貴が投げたボールは、3ピンにしか当たらず、惜しくも1ピンだけが残ってしまった。
次はあたしの番。
ボールを持って、狙いを定める。
ボールはゴロゴロとスピードを出しながら、一直線に転がっていく。
見事、ストライク。
「悠貴、見た!?ストライクよ!!」
嬉しくて、悠貴に興奮気味に言う。悠貴は驚いたような表情(カオ)をする。が、
それは一瞬だけで、すぐに笑顔になった。
「なによ……」
「ストライクだね」
にこにこ、へらへら。
「ええ。やったわ!」
「嬉しい?美咲」
にこにこ、へらへら。ずっと微笑んでいる悠貴。頭がおかしくなってしまったのだろうか。それよりも、ストライクを出したことの方が頭の中を占めていた。
「勿論、嬉しいに決まってるじゃない!」
そう答えると、悠貴はクスリと微笑んで、こちらにやってきた。
ハイタッチをするのだろうと思っていたあたしは、両手を上げてスタンバイ。
悠貴が手を伸ばしてくる。しかし、その手はあたしの両手をスルーして。
わしゃわしゃ。
「っ!?」
あたしの頭をぐしゃぐしゃにした。
「ちょっ、悠貴っ……?」
「……可愛い」