(気まぐれっぽい)Queen
「美咲ちゃん、綺麗だよね〜」
友達は、あたしを憧れの目で見つめてくる。
「松坂さん家の娘さん、綺麗よね〜」
友達のお母さんまでもが、あたしのことを綺麗と言ってきて、他の子とは違う扱いをしてくる。
「美咲、貴方は私の自慢の娘よ。私に似て、とっても美しいわ」
お母さんの自慢の娘なのは、とても嬉しい。
別に、『綺麗』と言われるのも『美しい』と言われるのも嫌ではなかった。褒められているんだもん。
友達は憧れの目で見てきて、普通に接してくれない。それはちょっぴり寂しかったけど、毎日が楽しかったから、別に良かった。
でも、小学五年生のあの日。現実を思い知らされた。
「ねえ、お母さん。今日はね、さっちゃんとゆうちゃんと遊んだの」
「ふふっ。楽しそうで良かったわ。まあ、美咲は綺麗だから」
「綺麗……?」
「そうよ。美咲は綺麗なの。だから、友達も多いのよ。やっぱり貴方は私の自慢よ」
その時、お母さんは褒めてくれた。多分、そうなんだと思う。
けど、あたしにはそれが、『綺麗じゃなかったら、仲良くしてくれない』っていう風に伝わってきて。
その日から、『美咲=綺麗』でいなければいけないのだと、思った。
「美咲ちゃーん、遊ぼー?」
「うん、いいよ」
あたしは微笑む。きっと、目の前にいる友達は綺麗だと思っているだろう。
ああ、良かった。
こうして、笑うのは綺麗でいるため、となった。