(気まぐれっぽい)Queen
小学六年生のとき、大好きなキャラクターがいた。
『笑顔は花』という題名のアニメの主人公だ。名前は確か……原田 みづきだった気がする。
みづきは関西弁で、物事をはっきり言って、喜怒哀楽の表情が豊かな子だった。
笑顔がとびきり可愛くて。友達が沢山いた。
そんなみづきに、あたしは憧れを抱いていた。
だから、まずは少しでもみづきに近づこうと、見様見真似で関西弁を喋るようにした。
「あ、美咲ちゃんおはよー」
「ゆうちゃん、おはよーさん。はよ教室行かへんと遅れてまうで」
「え………」
ゆうちゃんは、絶望した顔をして、俯いた。
「どうしたん?」
具合が悪いのか、心配になってゆうちゃんの顔を覗き、手を差し出す。すると、ゆうちゃんは吃驚したのか大げさに肩を揺らしあたしの手をひっぱ叩いた。
「触らないでっ!」
咄嗟に、出てしまったんだと思う。でも、心臓がズキズキと痛む。
「あ……、ごめんね?ごめんね美咲ちゃん。ごっ、ごめんなさいっ」
ハッと我に返ったゆうちゃんは、ポロポロと雫を零しながら何処かへ走っていってしまった。
振り払われた手。ジンジンと痛い。泣きたいのは、こっちだよ……。
あたしの頬を一筋の涙が伝った。