(気まぐれっぽい)Queen


他の友達には変な目で見られ、影でこそこそ言われるようになった。


「美咲ちゃん、綺麗だけど口調がね……」


「そうそう。なんで関西弁喋ってんのって感じー。しかも、ちゃんとした関西弁じゃないし」


あたしは思い知った。あたしは、綺麗で完璧な美咲ちゃんのままでいないとダメなんだって。


「お母さん、あたし、関西弁で喋っておったら、だめなんやって。友達がいなくなってしもうた」


関西弁で喋るのをやめようとは思わなかった。あたしはまだ、みづきに憧れていたから。


「……美咲。関西弁で喋ったっていいのよ。私は全然気にしないわ。……でも、友達に嫌われたくないならやめなさい」


「……つき」


「?なあに、美咲」


「嘘つき!お母さんだってあたしが関西弁で喋っているの嫌なんでしょっ!綺麗で完璧なあたしが、お母さんの自慢の娘で!関西弁のあたしなんてっ……!」


学校で溜まっていたモヤモヤをお母さんにぶつけて、お母さんを傷つけた。
これは完璧、あたしの八つ当たり。お母さんは、悪くない。


頭では分かっていても、あたしの口は止まらなくて。


「お母さんなんて、大ッ嫌い!」


そう投げ捨てて、家を出た。後ろから、「美咲、美咲!」とあたしを呼ぶお母さんの声が聞こえたけど、構わず走った。


お母さん、ごめんなさい。


今ならはっきり、謝れる。
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