愛して。Ⅲ
「あーもう、寒い!」
思わずそう口に出してしまうくらい寒い、この冬。
ここ数年では一番の寒さで、雪が少ないこの地域にも何度か降った。
今日はまだ雪は降ってないけど、足元は滑りやすくなっている。
「真梨、あっちに甘酒あるって!行こ!」
南山隼が嬉しそうに指を差す。
隼は一つ年下の獅龍の幹部。
女の子みたいなかわいい容姿だけど、喧嘩はすごく強いみたい。
隼が指し示す方向には、確かに「甘酒」と書かれたテントが見える。
「うん。行きたい」
寒いから、温かい甘酒で温まりたい。
隼はスキップしそうな勢いで甘酒のテントの方へ行ってしまう。
あたしも隼を追いかけようかと思ったが、右手が蓮の左手と蓮のポケットの中で繋がっていることを思い出してやめた。
蓮は少し緩んだ手を握り直す。
「隼、あんまはしゃぐとコケるぞ」
蓮がそう言った瞬間、隼はタイミングよく足を滑らせる。
だけど抜群の反射神経でなんとか転ぶことは回避したようだった。