ひまわりの約束ー君だけを、ずっと。[完]
その瞬間。
生まれて初めての音を聞いた。
――トクン、トクン。
胸の奥で。
鳴り続ける音。
自分でもハッキリとわかるくらいに。
どんどん速くなっていく胸の音。
『乗るなら早くしろよなぁ』
『い、いいの……?』
『置いてくなって言ったの、おまえだろ?足痛いんだろ?』
『う、うん……ごめん』
この胸の音が。
大きな音が。
男の子にまで聞こえてしまわないかと心配になった。
胸のあたりをぎゅっと掴む。
『乗らねーの?それじゃ置いて……』
『ま、待って!』
あたしは慌てて男の子の肩につかまり、男の子はあたしを背負って立ち上がる。
『……うっわ、重たっ』
『うっ……ごめんね……っく……ひっく……』
『わーわー、ウソ。ウソだって。せっかく泣き止んだと思ったのに。また泣くなよ、頼むから』
『だって、重たいって言うから』
『冗談だよ』
『冗談でもひどいよぉ……』
『アハハッ』
このとき、男の子の背中が。
あたしには、すごくすごく頼もしく見えた。