ひまわりの約束ー君だけを、ずっと。[完]



それにしても、静かだった。



聞こえるのは、蝉の鳴き声だけ。



迷路の入口付近では、何人かの人とすれ違ったり、



あたしを追い越して歩いていく人がいたけど、いまは全く人の気配がない。



少し不安になってきて、来た道を戻ってみたり、違う道を進んだりしてみる。



前を見ても、後ろを振り返ってみても。



あたし以外、誰もいない。



ひとりぼっち……いくらポジティブなあたしでも、さすがにだんだん心細くなってきた。



手に持っていたソフトクリームも溶け始めている。



『とりあえず歩かなきゃ』



そう自分に言い聞かせて、少し早歩きで進み始めたとき、



――ザクッ。



『わっ……!』



――ドサッ。



土のへこんだ部分につまずいて、あたしは派手にうつぶせで倒れ込んだ。



『……イテテ。あ~もぉ~最悪』



うつぶせのまま、少しだけ顔を上げ前方を見つめると、



倒れた衝撃で手放してしまったソフトクリームが、地面の上でグチャッとなっていた。



『あーあ。ソフトクリームがぁ……。アリさーん、ごちそうですよー』



ため息をついたあたしは、手をつきながら、ゆっくりと起き上がって地面に座りなおした。



足についた土を手で払っていたら……



『ギャー!血まで出てるーっ』



ヒザを擦りむいて、痛みとともに赤い血が滲んでいた。
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