うちの嫁
秋茄子には少し早いけれど
秋茄子を嫁に食わすなっていう諺あるでしょう?あれっ酷くない?美味しい秋茄子を嫁になんぞ食わしてなるものか‼︎って思ったけど、実は秋茄子って傷みやすくって、それを大事な大事なお嫁さんに食べさせてはダメよって説もあるみたい。
なんでもふた通りあるって、私あんまり好きじゃないな。
潔く一個でいいのに、選択肢を残しておく日本人の悪い癖っていうの?あれ嫌い。
でも秋茄子は美味しいからいいの。今日は、お義母さんに、秋茄子のお料理教えてもらうんだ。茄子っていうと、畑からとってきてそのまま食べるだけだったのに、色んな食べ方があるんだよね。
お義母さんから糠床も貰ったの。分けてもらったんじゃなくって、そのまま貰った。もう私は触れないからって、それ聞いた時、なんだか寂しかった。
でもあたしは思ったんだ。
お義母さんの代わりに、あたしが美味しい茄子の浅漬け漬けて食べさせてあげよって。そうしたらまた散歩に連れていってくれるかな。
「ただいま戻りました」
あたしとしては、ただいまー‼︎でいいんじゃないかと思うけど、そういうとこ、お義母さん厳しいんだもん。昔のお姑さんはもっと怖かったのよ、って口癖みたいに言うの。どんなけ怖い顔しても、あたしの姑は可愛いんだけどね。
「じゃ、お茄子洗いましょうか」
「はーい」
「ミルキーさん、返事は短く明瞭に」
「はいはい」
「一度でいいの」
「はぁい」
お茄子を洗い出したけど、ヘタを綺麗に洗えだ水を出しっ放しだ、なかなかうるさい。お茄子に包丁を入れる。少し前までは腕の毛がまな板に散らばってたけど、それも最近はなくて、綺麗な肌になってきた。
「ほら、よそ見しない」
「だって、これ」
あたしはまな板で泳いでいた羽を掴むと、姑の前にかざした。
姑は、それはもう美しい白鳥だった。
老いてなお輝く、白鳥だった___。
(嫁)