うちの嫁
わたくしのお姑さんは大変、厳しいお方でございました。嫁は奉公するものと徹底的に叩き込まれ、時間というものは平等ではないのだと教え込まれました。
ええ、それが今、嫁は咆哮しております。
お風呂掃除では、桶を頭に被り、洗濯物を干すと下着を頭からほっかむるのです。
なぜ、私が急に姑のことを思い出したかというと、嫁のせいというか、お陰というか、寝物語のように姑から聞かされていた、戦時の話。防空頭巾を頭からかぶり、戦火から逃げ惑っていた姿が、チンパンジーがパンツの隙間から目を覗かせている姿と、これまたかぶるからでございます。
とても陽気そうで、見ている私も笑ってしまう。
あの頃の子供たちも、こうして笑っていられたら良かったでしょうに。
争うことからは、なにも生まれません。
笑うことは、様々なものを生み出します。思い出し笑い、笑い泣き、その点、うちの嫁はニーッと笑います。真一文字に口を目一杯広げ、あまりの歯肉の鮮やかさに目が眩むほど。
遊び疲れたのか、下着を被ったまま寝息を立て始めたので、タオルケットを掛けてあげ、私は洗濯物を畳みました。
皺の伸ばし方、効率の良い畳み方を教えるつもりだったけれど、気持ちの良い寝方があるのなら、もう教えなくてもいいのかしら?なんて考えて、ふと手が止まったわけですよ。
いつもなら、誰が見ているかもわからないと、素早く畳むはずの洗濯物を、目の前に掲げてみたんです。それは、下着です。誰の目にも触れさせてはならない。
その下着をですね、私はなんだか、被ってみたくなって___。
この隙間から見えるものは、そんなに可笑しいのか、歯肉が輝くほど可笑しいのかと、気がついたら被ってまして___。
「ちょっと‼︎ミッちゃん何してるの⁈」