あの日の雪を溶かすように
恩返し
「…あの、一つだけ、いいかな?…その、様子見って、どうするつもりだったの?」

「えっ?」

「だから、様子見って、何なの?
もし、君の弟が轢いたのが私だってわからなかったり、
君の知らない人だったら…
黙ってるつもりだったってコト?」
アリスの問いに、兄弟はうつむいた。

「それは…」

「別に責めるつもりはないよ。当て逃げしたこと。
そんなにひどい怪我でもなかったし、こうして謝ってんだし。
ただ、今回は私で運が良かっただけだから。
これからは気をつけてね。」
アリスはレジのお金の整理をしながら、
素っ気無く言った。

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