あの日の雪を溶かすように
…ぃやいや

そんなことより、やばい。

あの夫婦の窮地を救えるのは、私だけだ。うん。私だけ。
少ししゃれてそう思うと、アリスは小声で 急げ、急げ、と繰り返しながら
コートの端で「何か」につけてしまった靴あとを拭うと
普段出したことの無い 慣れない大声で

「すいませーん! お探しのもの、これですかー?」

と、尋ねてあげた。大きく その「何か」を掲げて。
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