あの日の雪を溶かすように
シュウは黙ったままアリスに近付いて来た。
「…」
アリスは頬を思い切り叩かれると思っていた。
だとしても、しょうがない。自分でも、納得していた。
シュウが手を挙げた。
アリスが眼を強くつぶり、歯をくいしばる。
「…!」
だが、いつまで経っても一撃が来ない。そっと眼を開けると、シュウはアリスの髪の毛を優しく手に取っていた。
「な…何してんの…?」
「…ボサボサだな。髪…」
「あぁ…かもね。手入れしてないし…ハハ…」
苦笑いを浮かべるアリスとは対照的に、シュウは至って真顔である。
「…違う。この痛み様はそんなんじゃない…」
「ぇ…?」