あの日の雪を溶かすように
困った。
なんだか、ものすごい罪悪感を感じる。
自分のドジのせいで、この人に迷惑をかけてしまっている。

私以上にこの人は罪悪感を感じているだろう。
ホントはこんなとこに来たくなかったはずだ。

そう思うと、今度は恥ずかしくなってきた。
どうしようもないほどに。

「…」
三人の間に無意味な沈黙が続いた。

「……全然、ダイジョブなんです。」
最初に沈黙を打ち破ったのは、アリスだった。
当然と言えば、当然だ。

「…バイクに跳ねられたんだ。無事なわけ…」
「ほんとに、ダイジョブなんです。ほら。」
アリスは男が言うのを途中で遮ると、葵にやってみせたように
プラプラと手首をふってみせた。

「ホントに、平気なのかい?」

「はい。だから全然心配とかいらないんです。」
しかし、不運なことにその男は、
人一倍心配性に見える。

そして、アリスのその勘はズバリだった。


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