あの日の雪を溶かすように
「…あの人が、先輩を轢いた人なんすか?」
葵は率直に聞いた。

「いや…多分、助けてくれた人。」

「!!…だったら何で…?」

「最低だよね。」
アリスは瞳を閉じて、ボソッと小さくつぶやいた。

少し間をおいて、葵はアリスの腕を優しくとった。
それから、小さく微笑んで言った。

「先輩のことすから、…迷惑とか、かけたくなかったんすよね。
ホントに、不器用なんすから…。
無理しないでいいです。
ダイジョブっす。
私は、先輩のこと、信じてますから。うん。
ダイジョブ。」

手をギュッと握られる。

信じるって、何を?
ホントにこの子は分かんない子だ。

そう思いながらも、心の奥で確かに感じていた
胸をキュッと締め付けるようなカンジは、

アリスにはとても懐かしく、いとおしいモノだった。


< 35 / 313 >

この作品をシェア

pagetop