あの日の雪を溶かすように
「…普通です。普通に、元気です。」
それに答えるようにアリスは
とても…愛想よく答えた。

災難だったね、と言うと、彼はアリスの右腕をすっと、すくうようにして
持ち上げた。

「…どこか痛むところは?」
「どこも。」
立ったまま答えるアリスを見て中年の医者は
まぁ座って、と笑って椅子を指差した。

アリスがその椅子に座ったのを確認してから
ふん、と彼は口元に手をやると、
レントゲンやらなにやらが並ぶほうへと体を動かした。
カルテっぽいのも真剣に見ている。

何かまずいことでもあったのだろうか。

ほんの少し不安になったアリスだったが、すぐに思い直した。
別に、もう関係ないんだ。
どんな病気にかかったって、もう。

だって、どうせ今度のクリスマスには、私は…。

       ひげ面のおっさんに 復讐してやるから。

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