あの日の雪を溶かすように
医者はまたくるっとこちらを向きなおすと、笑顔で話し始めた。
「アリスさん?」
「…はい?」
「珍しい名前だね。かっこいいじゃないか。」
「はぁ…ありがとうございます。」
そこまで言うと、彼は再度くるっと椅子を向こうに回した。
それから少し待って、カルテを机に置きなおして、
その体制のまま首だけをこちらに向けた。
「…今日で退院です。
バイクもあんまり飛ばしてなかったみたいだし、これといった外傷はないです。
あえて言うなら右手を少しひねっているけど、これも大したことはない。」
「あの、治療代とかは?」
アリスが最も気にしていたのは、このことだった。
母が事故で死んでから、一度も病院には来ていない。
避けていた。
「アリスさん?」
「…はい?」
「珍しい名前だね。かっこいいじゃないか。」
「はぁ…ありがとうございます。」
そこまで言うと、彼は再度くるっと椅子を向こうに回した。
それから少し待って、カルテを机に置きなおして、
その体制のまま首だけをこちらに向けた。
「…今日で退院です。
バイクもあんまり飛ばしてなかったみたいだし、これといった外傷はないです。
あえて言うなら右手を少しひねっているけど、これも大したことはない。」
「あの、治療代とかは?」
アリスが最も気にしていたのは、このことだった。
母が事故で死んでから、一度も病院には来ていない。
避けていた。