あの日の雪を溶かすように
「ご両親、亡くされてるよね?」
先生は少し遠慮気味に言う。

「……
えぇ。そうです。」
そのことを察したアリスは、出来るだけ早く返事をしようと思った。
気をつかわれるのが嫌だったから。
そう思って早めに口を開いたが…それでも、やはり
一瞬、いや、それ以上、口籠もってしまった。

「うん。だとしても、心配する必要はない。君の祖父母と連絡がついてる。
忙しくてここには来れないそうだが、君のことをすごく心配していたよ。
だから、きみがそんなこと心配しちゃったら、あべこべだ。」
そう言って先生はハハハ、と笑った。

「はぁ…そうすか。」

「…で、今日で退院ってことになるんだけど…」
途中まで言うと彼は一枚のレントゲン写真を指差した。

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