あの日の雪を溶かすように
「……。」


「…知ってます。」

「えっ!?」
アリスの突然の告白は、いつも人を驚かせる。
先生はペンの動きを止めた。きれいに、ピタッと。

「病気のこと、ホントは全部知ってるんです。」
アリスはゆっくりと続けて言った。

「本当に…?」
医者は半信半疑だ。

「…本当に。」

三度目のアリスの告白に、
そうか。そうだったのか、と彼は大きくため息をついた。

「…それじゃあ、運が良かったなんて言って、すまなかった。許してほしい。
君が知っているとは…」
そこで先生はアリスに頭を下げた。

「ぃ…いや、全然気にしてませんから…やめてください。」
ちょっと予想外。

「いや…それで?治療は?」
先生はまだ少し落胆気味だ。

「してません。何も。」
アリスはうつむき気味に答えた。


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