あの日の雪を溶かすように



それから、数ヶ月。


アリスにもぽつぽつと友達ができだしていたのだが、
家庭内の事情で他県に引っ越し、一人暮らしすることになってしまった。
もちろん、学校は転校することに。



年が明けてからの予定だったのだが、
アリス自身の強い希望で12月24日のイヴの日に引っ越すことで落ち着いた。

彼女は意外に涙もろい。深読みすれば、友達を自分からつくろうとしないのも、
別れを涙で濡らしたくないからなのかもしれない。

引越しが決まった日は、友達がめざとく反応してくれた。
もちろん、アリスは冷静を装った。

男子の中でもこのことはすぐに広まった。
比較的男子からの人気は高かっただけに、残念がる者は多かったが
最も真剣にそうしていたのは、桜だっただろう。

アリスは桜のガックリとした姿を見つけると、こう言って、学校を後にした。
「今まで私と話してくれて、アリガトウ。楽しかったよ。サクラ…じゃぁね」




そして、引越し当日の、夜。




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