あの日の雪を溶かすように
しかし、葵の耳が異様に良かったのは誤算だった。
一人爆笑していた葵ではあったがアリスの呟きを聞き逃しはしなかったのだ。

「…ってことはぁ、候補がいるってことすかぁ!?」
声が笑っている。葵に馬鹿にされるなんて、あってはならない。

「…いない いない。葵と同じだから、心配しないで。」
軽く抵抗した。もちろん葵はノーダメージ。

「んじゃぁ、決まりっ!今から寂しい女同士で祝っちゃいましょうよっ!!」
めいっぱい明るい声で葵は言った。

しかしアリスはわざと空白をおいて、真面目な口調でそれを断った。
「…ごめん、葵。今日はマジでそんな気分じゃないんだ。
退院したばっかで疲れもあるし…悪いけど、今日は、…ゴメン。無理だよ。」


< 58 / 313 >

この作品をシェア

pagetop