あの日の雪を溶かすように
ゆっくりと受話器を机に置いたアリスは、そのまま椅子に腰掛けた。

結局、彼女は風呂場で泣いていない。
必死に我慢したわけではなかったが、努めてそうしたのは事実だ。

あの時私は、何が悲しくて泣きそうになったのだろう。

ふとアリスは自分の涙の理由が気になった。

病気でもうすぐ死ぬからか?
それとも、昔のこと思い出したせい?

わかんない。 私って、もしかして馬鹿なのかも。

…ほんとに、どうしてだろ。

考えるのがだんだんめんどくさくなってきたアリスは、
もう考えるのをやめて、無造作にテレビをつけた。


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