あの日の雪を溶かすように
じゃあ、さっきもそういうことだったのか。

病気で死ぬって言われて、私は気にしていないつもりだったけど、

…実際は、一人でそんなことに耐えられるほど、私は強くないんだ。

考えないようにしていただけ。
でも、一人きりの、あの場所じゃ、つい、考えてしまう。


だから、泣いてしまいそうになったんだ。
救ってくれたのは、葵からの電話の音。

…なんだ。
ふつーの理由じゃん。結局なんだかんだ言って、死ぬのが怖いってことか。
結構弱いな。私。
自分では、強くなったつもりだったのに。

アリスはテレビのリモコンを手にとったが、テレビを消す勇気はなかった。

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