あの日の雪を溶かすように
「…」



「いやね、メールにしょーかなとも思ったんすけど、先輩ケイタイ持ってないし…って、あれ?先輩?もしもーし…」
そう言うとアリスは気付いたように返事をかえしたが、
葵はいつもと様子が違う彼女に、気付いていた。

「ぁあっ…ごめん。なんか…あれっ?」

「…先輩?さっきからあたし達、アレアレ言ってるだけじゃないすか。」
葵が笑いながらそう言うと、アリスもつられて笑ってはくれたが、

アリスの声は、確かに震えていた。

「いやっ…なんでもないんだけど、なんでだろ
…あれっ?おかしぃな…ちょっと、待ってて。」
声の震えが大きくなっていく。



「ほら。またアレって言ったー。」
葵は精一杯、明るい。


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