あの日の雪を溶かすように
「ちょっ…何拒否ってんすか!!先輩!!」
ドアの向こう側で葵が訴える。近所さんの迷惑にならないように、小声で。
意外に常識人だ。

ドアに背を向けたアリスは、笑っていた。
本当に、楽しそうに笑っていた。

「何しにきたんだよ、葵。」
アリスは背を向けたまま、ドア越しに言った。

「何しにって、先輩元気なさそーだったから、私が元気づけたろーと思って!
…今日は寝かせないぜ…」
葵がドアの隙間から顔を出して言った。渋めの表情だ。

「何言ってんだよ…。」
アリスはあきれたような口調には矛盾した笑顔でドアを開けてやった。

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