あの日の雪を溶かすように
逆に桜は軽快な口調でアリスに話した。
「笑えるよ。俺が小学校3年生のクリスマスに、
そん時流行ってたオモチャがほしいって言ったんだ。
えっと、ハイパーヨーヨーっての。
知ってるかな。皆持ってたし、かっこよくって、もうー欲しくてほしくて。
サンタさんに速攻頼んだ。ヨーヨーくれーッて。
ハハッ
そん時俺、かわいかったんだ。
そんでさ、次の日の夜だった。深夜なんだけど。
ぅん、深夜で…」
アリスは見えなくても気付いていた。
桜の唇が
小刻みに震えているのを。
「…俺のじいさんが急に家に来たんだ。すげー顔してさ…」
桜は続けた。
「来いって言われて、わけわかんないけど
とりあえず車に乗ったんだ…
…どぅすりゃ良かったのかな…?
病院が見ぇて…ガキだったけど、…
わかったんだ…」
アリスは寒さの中に白い息をハァッとはくのと同時に、
涙が眼にこみ上げてくるのを感じた。