あの日の雪を溶かすように
「どぉもぉ〜。ご指名ぃ、ありがとうございますぅん。」
葵が詰まったような声で腰をかがめながら色っぽく入ってくる。

「…他に指名する子がいなかったからな。ホントは嫌だったけど。…サービスはいいんだろな?」
アリスは少し低めの声で対応した。

「もちろんッ!ジャーン!」
葵が満面の笑みで後ろ手に持っていた袋を掲げた。
中にはビールとケーキがはいっている。

「あーあ…葵のせいでゆっくり寝れそうもないな。」
後ろ頭をポリポリと掻くような仕草をみせて、ニコッと笑ったアリスは、
部屋に戻っていった。

その後に、おじゃまします、と小声で言ってから葵もアリスの後を付いて行った。


二人きりの「退院祝い」が始まった。


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