あの日の雪を溶かすように



桜は今にも泣き出しそうなくらい、震えている。

「…病院入って…二人とも 
ッ…死ん… でるっ…て」

アリスはただ、黙って桜の話を聞いていた。
 
「事故ったって 俺、信じられなくて… 
夢じゃなかった…」
 
「…買い物帰りでさ…なんで深夜なんかにって…思ってた…

でもすぐわかったょ…
袋ン中…
フツーのヨーヨーが入ってたんだ…回したら光る…
ハイパーじゃない…全然フツーので
…ハハッ」

「…馬鹿だよ…ホント…手紙も…いっしょで…
    ッ…
『いい子にしてたねこれからも
           元気に がんばれ  
           サンタより 』って… 

もぅ…俺…」




 「泣くしかなぃょ…泣くし…か…」

「……」

そこまで言うと 何かが弾けたように 桜は 声を大にして 泣き始めた。



私と、同じだ。




声には出せなかった。
アリスも自分と同じ悲しみを背負うサクラを想い 
ポロポロとこぼれる涙を、とめなかったから。





   二人は 二人の最後の日に ただただ 泣きじゃくった。



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