マシュマロな彼
・お味はいかが?
「あぁ~…やっと終わったぁ」
斜め後ろで背伸びしている雄也くんの声で、意識が戻った。
というのも、ボーっとしていたせいでほとんど記憶がないんだ。
きっとそれは早起きしたせい……かな?
机の上に出している教科書を片付けながら
横にチラッっと目をやると机に顔を埋めている雪。
そこからは、微かに息遣いが聞こえてきている。
どうやらまた寝ていたみたい。
「雪、雪っ…お昼だよ?」
起こそうと思い、軽く揺すってみるけど起きる気配はない。
どうやら爆睡しているらしい……。
「雪っ、起きろって」
雄也くんも後ろの席から、ペンでツンツンしているけど雪はまだ夢の中。
はぁ……、しばらく寝せてあげるか。
一つため息を落して雪を揺するのをやめると
雄也くんも私と同じ事を考えていたのか、つつくのをやめた。
それから、いつもより少し大きく膨らんだバッグに手を伸ばした。
「一人で食べちゃおっかなぁ…」
私の目の前で「食べて食べて」と言わんばかりに堂々としている2つのお弁当。
いつも使っている淡いピンク色の桜が描かれたお弁当の横には
昔お兄ちゃんが使っていた淡いブルーのお弁当が、遠慮がちに顔を覗かせていた。