マシュマロな彼
どうやら、寝たふりをしていたら本当に寝てしまったようだ。
閉められたカーテンの隙間から、細く朝日が伸びているのが分かる。
まだ、唸るような声を出している雪をチラッ…っと見ると、ベッドの上にうつ伏せになったままだったけど、服はホテルの物じゃなくて
洗濯した、昨日と同じ服。
「雪っ、なんで早く起こしてくれなかったのよ―っ!!」
「ん~、だって桜の寝顔見てたんだもん」
寝顔って……
「可愛かったなぁー、"雪、大好きっ"って寝言で言ってた……ぶほっ」
「雪のバカ!!私、そんな事言ってないもん」
「はいはい、わかったから。早くしないと~」
「も~!!」
朝から調子のいい雪に、一発お見舞いしてやったけど、痛がったのは演技らしくてまったく効いてない。
焦る私を、まるで子供でも見るような目で見ては
「頑張れ~」
なんて、ヒラヒラと手を振ってる。