優しい歌 ※.。第二楽章 不定期亀更新

『真人はどうだ?』

『まだ変わりはありません。
 病院の方はいかがでしたか?』

『病院のことなら心配ない。』

『ご家族は?』

『昭乃と勝矢は一足先に向こうに帰らせた。
 もう……あんなことにはあわせやしない』

『そのこと何ですが、
 院長に御相談したいことがあるんです』

『どうした?冬生』

『僕の弟はALSです。

 まだ現状況では推測とされると言う事ですが、
 おそらく間違いないでしょう』

『……ALS……』

『はい、ですから残り少ない時間を
 真人君と一緒に生活させていただけませんか?

 今の真人君にとっては院長の御自宅は
 療養向きではないと思うのです。
 
 此方には、真人君の大好きなピアノもあります。

 音楽で心を癒していくことも可能です。
 暫くの間、僕に真人君を預からせていただけませんか?
 
 ずっと離れ離れになっていた親子の距離を、
 急に近づけることは出来ません。
 
 ましてや院長の御自宅には
 今の御家族の方もいらっしゃいます。
 
 真人君のケアーと共に、院長は御家族のケアーも
 なさらないといけないのではありませんか?
 
 病院のこともあります。
 
 そして僕も弟が納得の行く旅立ちをできるように
 準備を整えたいのです。
 
 弟と真人君自身の為に
 暫くの間、僕に預からせてください』




どういうこと?


瞳矢がALS。
確かに冬お兄ちゃんが言った。


だから瞳矢はピアノが弾けなかったの?
弾きたくても……動かなかったの?




「神前悧羅に編入が決まりました。

 卒業までは日本で生活するので、真人が望めば
 俺は真人と一緒に生活したい。

 俺と真人は従兄弟同士です。

 俺は今も一緒に住みたいと思ってます。
 だけど、紫音先生に言われたんです。

 それを選択して選ぶのは真人自身だって。

 だから真人が、他の未来を選択したなら俺はそれに従います」




冬兄さんの言葉を追いかけるように、
咲夜もまた、一緒に住みたいと切り出してくれる。


お母さんは優しい眼差しで、
僕を見つめた。



『真人、皆の傍に帰りなさい。
 貴方の居場所はまだ此処じゃないわ。

 お母さんはいつも貴方を思っているから。
 今は皆の傍に帰りなさい。

 いつも貴方の傍にいるから。

 私の可愛い子供、……真人……』




母さんの声がゆっくりと遠ざかる。


それと同時に何かに僕は強く引き戻された。

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