優しい歌 ※.。第二楽章 不定期亀更新
三つの古典条件。
ソナタ形式から緩徐楽章。
そして終曲はロンド形式。
幼い時から刻まれてた音楽の知識は、
瞳矢の音にゆっくりと歩み寄っていく。
僕たちの演奏は無事に終わった。
だけど場内から、拍手はおこらない。
『アイツは優しいから口にしないだけなんだ。
本当は迷惑してんだよ。
だからアイツの前から消えてくれ。
アイツの心を乱すな。
おまえとアイツの時間は終わったんだよ。
おまえはアイツにとって必要ないんだ』
突然、僕の中に昨夜の言葉が甦る。
その言葉が蘇った途端に、
体が反射して震えそうになる。
そんな恐怖から逃げ出すように、
僕はステージから飛び降りて、警備員をふり切ってホールの外へと飛び出した。
出演者用にプレゼントを置く場所に、
瞳矢の名前と、自分の名前を書き残して
花束を置くと、そのまま会場から飛び出して駅へと向かった。
*
瞳矢……ゴメン。
*
僕が瞳矢と出逢っていなかったら、
こんなに君を苦しめる事は、なかったのかも知れない。
浮かび上がること全てが僕を追い込んでいく。
何もかも全て、僕が悪い。
僕なんて要らない。
僕なんて必要ない。
会場から一番近い駅の窓口で、故郷である、
H市へと向かう切符を購入すると
改札を通り向けて、ホームに入ってきた電車へと飛び乗った。
後、四時間過ぎたら……
母さんが待つ、懐かしいあの街に帰れる。
お守りのようにポケットに忍ばせてある
タブレットケースに触れる指先。
後少し……。
その時が来るまで、
どうか……僕を見守ってください。
母さんが待つ、その場所に
もう少しで辿り着くから。