その手には…
時雨の日に
 電気の消された部屋。その正面には人が横になれるほど大きなソファが巨大な窓の前に1つあり、窓には暗幕のような黒いカーテンがかかっている。窓の外には、灰色の空がどこまでも広がり霧雨が降っている。
静寂に包まれた部屋の中に
人のいる様子はない。 

ガチャ。

静寂を破り部屋へと入って来たのは素肌にオーバーオールを着た、猫のような少女だった。しなやかな手足に腰まで伸びた茶色の髪、その少女は何故かぬいぐるみを引きずっていた。ツギハギがあちこちに
あり、紫に緑という色のコントラストが
得体のしれない不気味さを放っている。

「ハァ」

少女は小さなため息をつくと
ソファの上に足を投げ出して座った。
ぬいぐるみにヘッドロックを決めている。
少女が座るとそこだけスポットライトが
当たっているようだ。

「フゥ」

何を悩んでいるのか
目線は空中に固定されていて
その瞳は何も見ていない。
少女の口が小さく動き、言葉を紡ぐ。

「おそい…」
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