30分の待ち時間
あたしは駅を出てから(出されてから)、太一に引っ張られて駅まから遠ざかり、緑が生い茂る静かな道に来ていた。
住宅なんて皆無に等しい。
どこの田舎町だよ、本当に。
一応ビルが立ち並ぶ、あたしの自宅や学校がある市と同じ市のはずなんだけど。
少し離れてみると、こんなにも違う景色が広がっているんだ。
乗り過ごさなければ、一生来なかったであろう場所。
満員電車に毎朝揺られるあたしが、信じられなくなってくる。
「にしても何もねーな」
「そうね……」
しかしあくまで田舎。
コンビニもスーパーも見つからない。
そもそも田んぼが広がっていて、建物さえも見当たらない。
あるのは自動販売機に、古びた茶色い建物に、山だけ。
…緑が多くて静かなのも良いけど、コンビニやスーパーぐらいは欲しいなぁ。
「……ん?」
よく見れば、古びた茶色い建物に、看板があった。
薄くなっている字を見ると、駄菓子屋と書いてあった。
「太一。
駄菓子屋さんあるみたいだよ」
「おっ本当か?
行ってみるか!
いやー、駄菓子屋なんて何年振りだろうか?」
あたしの手を離していた太一は、頭の後ろで手を組みながら、駄菓子屋らしい茶色い小屋へ向かって行く。
…駄菓子屋あるみたいとは言ったけど、あれが運営しているのだろうか?
閉店した様に見えるけど……?