30分の待ち時間
閉店した駄菓子屋の前で言い合っていると。
突然閉まっていたガラス戸が開いた。
「おー、元気だのぉ」
中から出てきたのは、白髪のおばあさん。
あたしたちは言い合いするのを止め、おばあさんに向き直った。
「この辺で子どもは珍しいの。
この辺の子かい?」
この辺の子ではない。
だけど何故ここに来たのか問われるとマズい。
乗り過ごしたなんて言ったら、笑い者だ。
「あ、いえ違います。
学校帰りに遊びに来ていたんです」
学校帰り?
太一の言葉に首を傾げ、改めて太一の服装を見る。
清潔そうな半袖白ワイシャツに、
青の生地に黒い斜め線が入ったネクタイを緩く絞めていて、
穿いているズボンはネクタイと同じ青色。
肩に片方の取っ手だけかけている鞄は、どこにでもありそうな通学用鞄。
…そっか、太一ってあたしと同い年だっけ。
「ほーそうかい。
アタシは最初、駆け落ちでもしてきたのかと思ったよ。
若いって良いねぇ、フォフォフォフォフォ」
笑っているおばあさん。
……え?
かっ…
駆け落ちいいいいぃぃぃぃぃいい!?