30分の待ち時間








この世を包みこんでしまいそうなほど大きくオレンジ色に輝く、太陽。

そんな存在感のある太陽を眺めていると。




「……スズ」



太一に呼ばれて振り向くと、太一が笑っていた。

その笑顔が、太陽によってオレンジ色に輝いていた。



「ありがと。
スズの30分を俺にくれて」


「別に良いよ。
良い暇潰しになったからね」




それに、忘れることが出来ていた。

太一と一緒に言い合いしたり、笑い合ったりしていると。

学校での色々な出来事を、忘れることが出来ていた。




「……あたし最近、学校へ行くの嫌だったんだ」



気が付けば口走っていた。



「でも、変な意味じゃないの。
いじめとか受けていないから。

勉強は嫌いだけど、それ以外は充実していたんだ。
だけど、最近行きたくないなーって思い始めてた。

色々なことに関して憂鬱になっていた時に、電車を乗り過ごして、太一に会った。

太一に会っているときは、忘れていることが出来たんだ…全部。
嫌なことも辛いことも、全部忘れて楽しむことが出来た。

ありがとうはこっちの台詞だよ、太一」




あたしは黙って話を聞いてくれていた太一に、笑顔を向けた。







< 22 / 69 >

この作品をシェア

pagetop