30分の待ち時間
この世を包みこんでしまいそうなほど大きくオレンジ色に輝く、太陽。
そんな存在感のある太陽を眺めていると。
「……スズ」
太一に呼ばれて振り向くと、太一が笑っていた。
その笑顔が、太陽によってオレンジ色に輝いていた。
「ありがと。
スズの30分を俺にくれて」
「別に良いよ。
良い暇潰しになったからね」
それに、忘れることが出来ていた。
太一と一緒に言い合いしたり、笑い合ったりしていると。
学校での色々な出来事を、忘れることが出来ていた。
「……あたし最近、学校へ行くの嫌だったんだ」
気が付けば口走っていた。
「でも、変な意味じゃないの。
いじめとか受けていないから。
勉強は嫌いだけど、それ以外は充実していたんだ。
だけど、最近行きたくないなーって思い始めてた。
色々なことに関して憂鬱になっていた時に、電車を乗り過ごして、太一に会った。
太一に会っているときは、忘れていることが出来たんだ…全部。
嫌なことも辛いことも、全部忘れて楽しむことが出来た。
ありがとうはこっちの台詞だよ、太一」
あたしは黙って話を聞いてくれていた太一に、笑顔を向けた。