30分の待ち時間
「鈴、お願いがあるの!」
3日ほど経ったある時、葉月があたしに1枚の紙を差し出しながら言った。
「鈴。
私と一緒に、サッカー部のマネージャーにならない?」
「ま、マネージャー?」
「うん…。
ほら、私って1年生でしょ?
3年生の海先輩に会うチャンスなんてないから…。
マネージャー募集しているって、聞いたんだ。
私、マネージャーとして、海先輩の役に立ちたいの。
…でも1人じゃ不安だから…。
鈴、一緒にマネージャー、やってくれない?」
正直断ろうと思った。
いくら大事な幼馴染で親友の頼みだと言っても、葉月と海先輩が話している姿なんて見るの嫌だ。
だけど葉月の目は必死そうで。
あたしはいつの間にか頷いて、葉月から貰ったマネージャー希望用紙に、名前を書いていた。
数日後。
サッカー部顧問の先生から、新しいマネージャーとしてあたしたちが紹介された。
それぞれ自己紹介をしていると、サッカー部から黄色い声が上がった。
「おい!
岩清水(いわしみず)葉月って、1年生で1番可愛いとかって言われている子じゃね?」
「マジで!?
そんなに可愛い子がマネージャーとか…。
嬉しくね!?海も思わねーか?」
「……ん」
普段無口らしい海先輩は、それしか言わなかった。
ちなみに葉月が可愛いとか言われるのは慣れている。
それは本当のことだし、何より葉月は性格が良い。
あたしの自慢の、幼馴染で親友なのだ。