30分の待ち時間






ある時、サッカー部の決まりである、5時間目終了後部室へ行くというのを守るため、あたしは部室へ向かっていた。

今日教室の掃除当番だったあたしは、葉月へ先に行っていて良いと言っていたから、葉月は中にいるはず。

そう思ってドアノブに手をかけると。




「好きです、海先輩」



葉月が海先輩に告白しているのが聞こえた。

…葉月、いつの間に告白するって決めていたの?

いつか告白するとは言っていたけど。

…まさか今日だったなんて。



「…好き?
岩清水さんが…オレを?」



友達にさえもあんまり話さない海先輩の声がする。

あたしはその場を逃げ出した。



走って校門から出たところで、スマホを取り出して、葉月にメールを送る。


<ごめん葉月!
今日あたし部活行けないや!

突然でごめんね(>_<)>





笑っていられる自信がなかった。

あたしが海先輩を好きだって知らない葉月の前で。

いつも通り笑っていられなかった。




あたしは逃げ出した。

最近悩んでいた、葉月との関係を忘れるかのように。

忘れたかったんだ、ほんの少しの間でも。

海先輩を好きな気持ちも。

葉月と一緒に過ごしてきた毎日も。




今だけは、

忘れていたかった――――







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