30分の待ち時間








☆☆☆




波が行ったり来たりする音が、静かに響き渡る。

さっきよりも太陽は海に沈んで見えなくなっていた。




「……あたし、最低だよね。
海先輩からも、葉月からも、毎日からも逃げ出して」



話しながらあたしは泣いていた。



最近の出来事で、よく眠ることが出来なくて。

快速電車で帰っていたけど、各駅停車を選んで帰っていたりした。

のんびり流れる景色を眺めていると、忘れることが出来ていたから。



家にいても学校にいても、思い出してしまう。

あたしと葉月は幼い頃から仲が良いから。

お互いの家にお泊りしたことや、一緒に近所の公園で遊んだことや、廊下で色々お喋りしたことなど、思い出が色々な場所に溢れている。

だからふとした瞬間に思い出して、あたしが葉月に何も言えずにいることを考えてしまうんだ。



それなのにあたしは、葉月に何も言えていない。

可愛くて性格も良い葉月に、戦いすら挑まなかった。

無理だって諦めていた。

敵いっこないって自ら気持ちを抑えていた。



最低だ。

葉月は可愛くて性格も良くて、自慢の幼馴染で親友の葉月に、何も言わないのだから。

スマホは電源切れていて使い物にならないけど、電源が切れる前は葉月からメールとか何回も来ていた。

…心配、かけちゃっているんだ…あたしは。







< 29 / 69 >

この作品をシェア

pagetop