30分の待ち時間







「…スズってさ、優しいんだな」


「え?」




黙って聞いていた太一が、ふっと笑いながら言った。

あたしはその言葉に、驚くばかりだ。



「あたしが?優しい?」


「うん。
スズは優しいよ、誰よりも」


「どうしてっ…。
あたし葉月に、何も言えていないんだよ。

ずっと一緒の、幼馴染で親友なのに」


「逆に幼馴染だからこそ、言えないんじゃないかな」


「え?」


「ずっと近くにいたんだろ?その子と。
誰よりも近い存在だからこそ、何も言えなかったし、傷つけたくないって思っちゃったんじゃないかな?」


「…………」


「…よく頑張ったな、スズ」




ポンッと、顔を覆って泣いているあたしの頭に、太一の手が乗っかる。

そのまま髪の毛をワシャワシャされた。

…だけど別に良かった。

髪の毛がグシャグシャになっても。

いつもだったら嫌だって言っていただろうけど。




「スズは友達思いな子だな。
その友達を傷つけたくないから、自分の気持ちしまい込んで。
辛かったと思うけど、スズはよく耐えたと思うよ。

頑張ったな、スズ」




笑いながら、小さな子をあやすように頭を撫でてくれる太一。

その手に、あたしはいつしか涙が止まって、笑うことが出来ていた。






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