30分の待ち時間
あれは俺が5年前、小学5年生のこと。
俺には勉強が出来る3つ上の兄がいた。
兄貴は勉強が出来て、器用で何でも出来て、完璧な奴だった。
俺はよく、両親や周りの奴から、兄と比べられていた。
正直兄貴が羨ましかった。
だけど、兄貴になんてなれるわけないってわかっていたから。
俺は周りの声を無視していた。
ある時、見知らぬ女子3人が来た。
兄貴のクラスメイトで、テスト前だから優秀な兄貴に勉強を教えてもらいに来たのだ。
俺はリビングでゲームをしていた。
すると母さんが俺のゲームを取り上げた。
「何するんだよ!」
「あんたもお兄ちゃん見習って勉強しなさい!」
「また“お兄ちゃんを見習って”かよ。
ふーんだ!」
俺はリビングを出て、兄貴の隣の部屋にある自室へ向かっていた。
すると兄貴の部屋の扉が開き、兄貴を尋ねてきた女子3人が出てきた。
「わー、可愛い!」
「雷一(らいち)くんの知り合いかな?」
雷一とは兄貴の名前だ。
兄貴はその名前が好きじゃないってこと、知っているのか?