30分の待ち時間
2人は俺に謝ってくると、兄貴と一緒に部屋の中へ入って行った。
俺とソイツは、廊下に立っていた。
「太一くん、だよね?」
「…そうだけど」
「わたし、透子(とうこ)。
よろしくね」
「……ん」
「こら。
よろしくって言われたら、よろしくって返すのが礼儀だよ?」
「……よろし、く」
「ほら、言えば出来るじゃない。
最初からそう素直になれば良いのよ。
不器用なんだね、太一くんって」
「……うるせっ」
「……わたしにもね、お姉ちゃんがいるんだ。
わたしよりも真面目で何でも出来る、完璧なお姉ちゃんが」
「……え?」
俺と、一緒…?
「わたしも、昔からよく、親とかに比べられたり、友達に“どうしてお姉さんは優秀なのに透子は優秀じゃないの”って言われたりしてきたの。
さっきの太一くんみたいに、上手く挨拶とか出来なくて、お姉ちゃんの友達に“お姉ちゃんと全然違う”って言われたりしていたんだぁ。
だから太一くんの気持ち、凄くわかるな、わたし」
「…………」
「でも、太一くん。
太一くんは太一くんのままで良いと思うよ。
お兄ちゃんにはない、太一くんの良さが絶対あると思うんだ」
そのまま笑って、透子は兄貴の部屋に戻って行った。