30分の待ち時間
俺は帰って兄貴に問い詰めた。
何故透子が戻ってきたことを言わなかったのか。
「ごめん、忘れてた」
兄貴にはアッサリ言われた。
その後俺らは取っ組み合いの喧嘩になり、母さんに怒られた。
俺は数学は苦手だったけど、透子の授業だから頑張った。
「先生、質問!」と沢山聞きに行った。
だけど透子は、俺を覚えていないのか、行動が他人行儀だ。
かつて一緒に遊んだ仲のはずだ。
「透子」
ある時我慢出来なくなって、俺は誰もいなくなった放課後の廊下で透子に呼びかけた。
「あ、光出くん?
わたしの名前、覚えていてくれたの?」
「……透子。
俺のこと覚えてねぇの?」
「何を言っているの?」
「俺だよ!
光出雷一の弟・光出太一!
5年前一緒に遊んだだろ!?」
透子が姉との話をしてくれたから。
俺は兄貴に対してコンプレックスを抱かなくなったと言うのに。
俺は透子に、
5年前のあの日からずっと、
恋していたって言うのに。