30分の待ち時間
滅多に声を荒げない透子が叫んだので。
俺は今にも出そうだった言葉を飲み込んだ。
「…わたしね、結婚するの」
「……え?」
「…雷一くん、と」
兄貴と……!?
「わたし、途中で引っ越したでしょ?
慣れない土地で、凄く不安だった。
そんな中、雷一くんが、わたしにメールしてくれたの。
そのメールに、わたしは助けてもらっていた。
不安じゃなくなっていたの」
兄貴が、透子にメールしていたなんて。
聞いたことがなかった。
「こっちに戻ってきてすぐ、お礼が言いたくて会いに行った。
そうしたら雷一くんから、好きだったって告白された。
わたし、嬉しくて…オッケーしたの。
そうしたらまさか、太一くんまでわたしのこと……ッ」
透子はその場にしゃがみ込んで泣きだした。
俺はただ何も言わないで、そのまま踵を返して歩きだす。
気が付けば最寄りの駅から電車に乗りこみ、忘れたくて寝たら、見知らぬ場所に辿り着いていた。