30分の待ち時間
結婚式
あたしは太一を引っ張って、駅に戻ってきた。
改札を通ってホームに上がると、運が良かったのか30分経っていて電車が来ていた。
帰宅ラッシュの時間だろうと思っていたけど、人は少なくて、座れた。
「スズ、どこに行くんだよ。
今更兄貴と透子に、何言えば良いんだよ」
「素直に、太一の言葉を伝えれば良いんだよ」
「はぁ!?
スズ、お前普通に素直とか言うけどさ。
素直になんて言える奴、そんないねーと思うけど」
「確かにそうかもね。
でも、時には素直にならないと駄目なときもあるんじゃないの?」
「そうだろうけど……」
「…じゃあ太一、さっきと同じことしよ?」
「さっきと同じこと?」
「うん。
さっき太一、あたしのことを聞く代わりに自分のこと言うって言っていたよね?」
「言ったけど?」
「それと同じ。
もし太一が素直に自分の気持ちを、お兄さんと透子さんに言ったのなら、あたしも素直に葉月に気持ちを言うことにする」
「…ギブ アンド テイクってことか」
「そうだね。
ってか太一、発音悪いんだね。
カタカナ読みじゃないの」
思わずクスッと笑う。