30分の待ち時間
「ではどうぞ。
そちらの方は?」
「お、俺の彼女です!」
彼女!?
何で太一、彼女発言しているわけ!?
でも待てよ。
彼女じゃなくちゃ、関係者じゃない。
関係者になれなくちゃ、あたしはこんな場違いな所で1人待つことになる。
こんないかにもお金持ちがうじゃうじゃし、
働いているスタッフさんもいかにも真面目そうなこの空間で。
…ぼっちは嫌―――ッ!
「そう。
あたしは太一の彼女なの。
未来のお義兄(にい)様とお義姉(ねえ)様の結婚式、お祝いしなくちゃいけないわ」
彼女っぽく見えるよう、太一の腕に自ら腕を絡ませる。
…巷にころがるカップルは、こんな暑苦しいことをしているのか。
私には信じられない世界だ。
「そうですか。ではご案内いたします。
式は始まっておりますので、お静かに」
「はいっ」
「はぁいっ」
キチッとダークスーツを着こなした男性のあとをついて行く。