30分の待ち時間
「スズ。
咄嗟についた俺の嘘に、よくついてきたな。
否定されると思ってたわ」
「しょうがないでしょ。
あんなお金持ちうじゃうじゃの場所で、ぼっちは嫌だから」
「お金持ちうじゃうじゃ?」
すれ違う家族連れに、首を傾げる太一。
「あの子どもが持っているピンク色の鞄あるじゃない?
あれ、子どものブランドショップで売っているものだわ」
「マジで?
詳しいなスズは」
「小さい頃、あの鞄が欲しくて親にねだったの。
だけど親はあんな高いもの、子どもが持つものじゃないって」
「なるほど…」
「あの家族、普通に見れば一般家庭ぽいけど、実際はお金持ちだわ」
「すげぇなスズ」
「フフ、これぐらい常識よ!」
「常識、ねぇ……。
そういえばスズ。
俺ら勢い余って来たけど、この服装で良いのか?」
「制服は冠婚葬祭オールオッケーよ!」
「やっぱり英語の発音悪いな、死んでるよ」
「あんたに言われたくないわ。
大体オールオッケーに、ネイティブ発音を求めちゃ駄目だわ」
「駄目なの!?
オッケーは知らないけど、オールって英語だろ?」