30分の待ち時間
扉を開けてくれ、静かに入る。
室内かと思っていたら、まさかの屋外だった。
多くの人に囲まれ、幸せそうな新郎新婦がいる。
あの新郎さんが太一のお兄さん・雷一さんで、新婦さんが透子さんかな。
…確かに透子さん、大きな瞳が印象的な人で、結構美人だ。
隣に並ぶ雷一さんも、幸せそうな笑顔を浮かべている。
「……ほら、素直になるんでしょ?
あたしと、ギブアンドテイクの約束しているんだから。
…頑張ってよ、太一」
何も言わないで、新郎新婦を見つめていた太一の背中を押してあげる。
「太一がここで素直になって頑張らないと、太一は次の恋なんて進めないよ。
あたし、太一には幸せな恋をしてほしいの。
あたしの話、聞いてくれたでしょ?」
「……スズ…」
「太一のあの明るい笑顔で、頑張ってよ!」
あたしは精一杯、太一が1歩踏み出せるよう応援する。
30分待たないといけなくなって憂鬱な中、明るい笑顔で駅から遠ざけてくれた。
あたしの話を聞いても1回も責めないで、
「頑張ったな」って言ってくれた。
あたしを元気にしてくれた太一には、頑張ってほしい。
太一が頑張ったのなら、あたしも頑張れる気がするんだ。
葉月に、本当のことを全て言える気がするんだ。
「太一、頑張って!」
あたしはもう1度、その背中を押した。