30分の待ち時間







あたしが今日学校から逃げ出さなければ。

お互い電車の中で寝なければ。

…決して会えなかった、あたしたち。




だけどそれも、もう終わり。

楽しかった今日も、もうすぐで終わりを迎える。




信号が青へ変わる。

多くの人の流れに流され、信号を渡ってすぐにある駅へ到着する。




「スズは上り?下り?」


「下りだよ。太一は?」


「俺上り」




…お別れだ。




「じゃあ、なスズ。
今度はお互い、幸せな恋愛しようぜ?」


「うん!
じゃあ、バイバイ!太一!!」


「じゃあなスズ!!」




あたしたちは同じ改札を通り過ぎ、それぞれのホームへ向かう階段の下で、大きく手を振り合った。

…そして同時に階段を上り始め、姿が見えなくなった。





もし友達なら。

もし彼氏なら。




ううん。

…もし、会うのが決められていたのなら。






「また明日」って言えたのに。

「また明日」が言えない。






家に帰ってあたしは、誰もいないリビングで、夕食も食べずに泣いた。

鍵を取り出すため開けた鞄が開きっぱなしで、中から貰ったみかんがこぼれ落ちた。




何で泣いているのか。

その理由がわからなかった。







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