30分の待ち時間







勿論だけど葉月は、太一を知らない。

あたしはあの後の話をした。

いつの間にか電車で眠っていて、起きた時急いで降りた駅での出来事を。




家の冷蔵庫の中にはみかんが冷えているから、あの出来事は嘘じゃない。

太一の笑顔を覚えているから、あれは夢じゃない。





「どんな制服?」


「えっと確か…。

白いワイシャツに、青の生地に黒い斜め線が入ったネクタイ、ズボンは同じ青色で、どこにでもある鞄を持っていたよ」




目を瞑らなくても思い出せる、太一の服装。

見た目も声も笑顔も、簡単に思い浮かべられる。




「同い年?」


「うん」




ホテルで太一は身分証明のため生徒手帳を出していた。

何でもっとちゃんと見ていなかったのだろうか?

…あの時は好きだって気がついていなかったから?

どんな理由であれ、ちゃんと見ていれば良かったよ。





「……そのネクタイ、何か見覚えあるかも」


「えっ!?本当?葉月!」




一筋の光が見えた気がした。








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