30分の待ち時間
仲良く笑っている葉月と海先輩を身近で見るけど。
あたしは不思議と昨日のように、逃げ出したいと思わなかった。
まだ少し胸は痛いけど、じきに治るだろうってわかる気がするんだ。
「…そういえば守屋さん、マネージャー辞めたんだね」
「あっはい!
やっぱりあたしには向いていないと思うので…」
「…そっか。
だけど今度もし良かったら、葉月ちゃんと一緒に試合見に来てよ。
そっちの方が葉月ちゃんも、嬉しいだろうし」
「そうします!」
あたしが葉月から海先輩の好きな人を聞いたことを、海先輩に言わなかった。
あたしは海先輩が誰を好きだったかなんて、聞かなかったことに決めたんだ。
海先輩がかつて誰を好きでも、今は葉月の立派な彼氏だから。
「……ん?
…海先輩、それっ……!!」
海先輩は何故か、ネクタイを2つ絞めていた。
その1つのネクタイに、見覚えがあったのだ。
青い生地に、黒い斜め線が入ったネクタイ。
…太一が絞めていたネクタイ、だ。
だけど何で、海先輩が太一と同じネクタイを?
「これ?
守屋さんたちが入学してくる少し前に、近くの高校と合併したの知ってる?
このネクタイは、その高校に通っていた男子のネクタイだよ。
それがどうしたの?」